★★★★★ Photographer's Gallery(フォトグラファーズ ギャラリー)
ロンドンで随一のクオリティを持つ写真専門のギャラリーである、
Photographer's Gallery(フォトグラファーズ ギャラリー)
建物まるまるギャラリーの持ち物となっています。
ここではコンテンポラリーな写真を批評性・芸術性の高い写真を工夫を凝らして展示しています。
地球の歩き方では、現代写真ギャラリーと和訳されており、現代美術の写真版?のような位置づけとなっております。
Oxford Circus駅から歩いて、3分ほどの好立地に構えています。
ちょうどSOHOのはずれあたりなので、このギャラリーをじっくり見終えた後にSOHOに繰り出すのも良いプランだとおもいます。
入場料は無料です。
休館日はありませんが、祝日などは開館時間が短縮されていたりするので事前にチェックするのがベターです。
下記が通常の開館時間になります。
Mon - Sat: 10.00 – 18.00
Thu 10.00: – 20.00
Sun 11.30: – 18.00
フロアはB1、GF、2F、3F、4F 、5F (1Fはオフィス)の5フロア構成です。総敷地は恵比寿の写真美術館よりは狭いくらいです。
GFにはオープンなカフェが設置されているので、合間に休憩を挟むことも出来ます。
私は飲んでいないのですが、コーヒーが美味しいとトリップアドバイザー内では評判です。笑
下の写真は実際に私が訪れた時のプログラム。
館内では、この質実剛健そうなフォントが効果的に使われています。(特にフロア表示のインパクトは凄い!)
Tateなどにもいえますが、展示物外であるフォントなどにもデザインが効いていて面白いですね。
このフォント、なんとなく「写真」っぽいのは気のせいでしょうか 。堅さが。。
写真集にもこういう堅さを持ったフォントがよく使われているような気がします。(William Kleinのとか・・・)
写真との相性が宜しいのでしょうね。
ギャラリーの様子を紹介しつつ、4F、5Fとフロアをまたいで開催されていた
DEUTSCHE BÖRSE PHOTOGRAPHY PRIZE 2015
の感想を綴りたいと思います。
このプライズは、近年重大な貢献をした写真家を対象としたものであり、このPhotographer's Galleryが主催、DEUTSCHE BÖRSE(ドイツ証券取引所)が協賛をつとめています。
このプライズは1996年から続いていて、毎年4人のファイナリストを選出し、この展覧後に受賞者を決定するようです。
有名なフォトグラファーを挙げると、Andreas Gursky やJuergen Tellerが受賞歴を持っています。
今年度は、NIKOLAI BAKHAREV、VIVIANE SASSEN、ZANELE MUHOLI、SUBOTSKY&WATERHOUSEがファイナリストとして選出されています。
その中から VIVIANE SASSENとSUBOTSKY&WATERHOUSEをピックアップしたいと思います。
SUBOTSKY&WATERHOUSEは、2007年から、今ではあらゆる犯罪の温床となってしまった、アパルトヘイト時期(1976年)にヨハネスブルグに建てられた白人用の大きなアパートメントを舞台に活動を始めました。その様子や独特の文化、コミュニティまたは建築そのものを、写真、設計図、エッセイなど様々なメディアを通してドキュメントしています。
建物の各部屋を回って、窓枠と若干の部屋の一部を写しつつ外の景色を撮る。それらの写真をを順に並べつなぎ合わせたのがこちら。
後ろから光をあてていて、離れてみると写真群それ自体が高層ビルのように見えてくる、キャッチーな演出です。
窓からの景色は、荒れ果てているこの町の現状。
この写真だとわかりづらいのですが、写真の上にもう1枚の写真をピンで留めてコラージュしている。この技法とセレクトされた写真が非常にマッチしていて、写真をよりエモーショナルなものに昇華することに成功していますね。これらの場合は、時代に取り残されたような、より痛々しいイメージが増幅されています。
同じくファイナリストのZANELE MUHOLIは黒人レズビアンの人権・迫害についてのドキュメントで有名な写真家です。SUBOTSKY&WATERHOUSEもそうですが、こうした社会性、メッセージ性の強い写真がプライズされるのはなんともヨーロッパらしいというか。イギリスらしいとも言えるのかな?移民問題や未だ残る階級意識による差別の誘発は明らかですので。
続いて、VIVIANE SASSEN。
最新写真集「Umbra」(ラテン語で「陰」を意味する)からの出典です。
サッセンの特徴的なヴィヴィッドな色出しに加え、今作ならではの光と陰とのコントラストが存分に楽しめます。
2014年に、日本で個展が開催されたのが記憶に新しいですね。
東雲のTOLOTと恵比寿のG/P galleryでの同時開催でした。
日本での個展とPhotographer's Galleryの展示を比較してみると、ずいぶんと印象が異なって見えます。(展示してある写真が違うので当たり前ですが_)
というのも、日本での個展ではオーソドックスな写真展の体を採っていましたが、ここでは写真だけでなく抽象的な映像を使ったり、鏡で反転してみたり。(部屋の角で鏡で反転させるアプローチは、観覧者をななめ45°の視点にたたせることで、単純にテレビを2倍の拡張する以上の視覚効果を生み出している。)
写真の配置を上下左右に散らしてみたり、額に入れずピン留めのみで展示したりと実験的なアプローチが採られています。
このギャラリーの面白いところは、セレクトするフォトグラファーがコンテンポラリーでアヴァンギャルドであることであり、またそれを展示する際のギャラリー側の姿勢も負けじと同じエネルギーを持っていることにあると思います。
現代写真ギャラリーという和訳は、的を得ているように思えます。
楽しいギャラリーでした。
よって★5つ。